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このSlack時代に「笑顔」の絵文字の価値を考える

suin2016年9月8日

最近の職場では、相手の様子を直接見ることができない文字によるコミュニケーションがますます増えているように感じます。メールに始まり、チャット、イッシュートラッカー、社内ナレッジベースなど様々です。リモートワークを推奨したり、実験する企業の報告も目にするようになり、今後は文字コミュニケーションは加速度的に増えていくものと予想しています。

こうした時代の象徴として、表題には「Slack」を掲げましたが、Slackに限らずビジネスチャットでのコミュニケーションと絵文字について調べたことを交えつつ稚拙ながら僕の考えを書いてみたいと思います。

過去に、Slackで簡単に「日報」ならぬ「分報」をチームで実現する3ステップ〜Problemが10分で解決するチャットを作ろうという記事を書いたこともあり、僕はSlackを日常的につかっています。あるとき、自分のSlackの発言を改めてながめてみることがありました。何の気なしに送信したものばかりですが、読み返してみると冷徹な感じがあったり、怒っているような印象を感じるものがいくつも見つかったのです。そのときは気づかないものです。当時リアルタイムでそれを読んだ同僚をどれほどネガティブな気持ちにさせたことでしょうか。申し訳ない…。文章表現も見直したいところがありましたが、それに加えて「チャットでは自分が考えている以上に感情面を表現したほうがいい」と思うようになり、絵文字の重要性を強く感じるようになってきました。

絵文字はビジネスでは不適切?

まず思い浮かんだのが、絵文字がビジネスの文脈で適切なのかどうかという疑問です。友人・家族・恋人とのプライベートのメッセージのやりとりで、絵文字が使われることはよくあります。ところが、ビジネスではどうなのでしょうか?

2010年にビジネスメールに絵文字はふさわしいかどうかを調査したデータ1がありました。これによれば、ビジネスメールに絵文字がふさわしくないと考える人が79%近くいるとのことです。スマホ普及率が2.6%2の2010年の頃のビジネス感覚と昨今のそれとは変化があると思いますし、調査対象がメールなのでチャットを対象にしたら、絵文字への抵抗感は低くなるだろうと予想しています。それでも、ビジネスのチャットに絵文字が不適切と感じる人は少なからずいるのではないでしょうか。

こうした事実と推測を踏まえつつも、僕個人の話で言えば、積極的に絵文字を使うようにしています。相手が社内の人間には抵抗なく絵文字を使いますが、取引先についても言が慎重にはなるものの、絵文字は笑顔のものを中心に使うようにしています。

ビジネス的な繋がりでも誰かが絵文字を使いはじめると、そのチャットルームで絵文字がどんどん増殖するという体験をしたことがあります。僕の務めている零細企業では、なんともご縁に恵まれ、誰もが知る大手上場企業と直接取引を行う機会がありました。しかもクライアントはその企業の部長を始めとするコンプライアンスにもブランディングにも厳格な立場の方たちでした。この方々をSlackにお招きし、プロジェクトの意思疎通をチャットを中心に据えることにしました。

初めはお互いによく知らない仲ということもあり、メールで交わされるような社交的なメッセージが送受信されましたが、我が社の代表が笑顔の絵文字🙂(:slightly_smiling_face:)を使いはじめると、その部長も徐々にお使いになるようになり、プロジェクトの終わり際には僕らよりも絵文字を多分に混ぜ込むようになりました。それは見る者を、嬉しい気持ちにさせるものでした。

絵文字は文字コミュニケーションの欠陥を補う方法の1つ

活字は情報量が少ないがゆえに感情面の誤解を生みがちです。脳裏に浮かんだことばを文字起こししていけば、依頼や指示の内容は相手に伝わりますが、感情の多くは伝わりません。もし対面や電話で話したら表情や声のトーンで、手書きなら文字の様子で伝わるものが、チャットではことごとく削ぎ落とされてしまいます。その結果、いらぬ不快感を与えたり、対立を生むこともあり得るものと思います。

厄介なことに、メッセージを送信する側は、感情がある程度伝わると思い込む傾向にあるそうです。研究によれば、送信者はニュアンスや感情が相手に78%は正確に伝わっていると予想したのに対して、メッセージを受け取った側には56%しか正しく伝わらなかったとのことです3。これは、そもそも送受信者間で意識の違いがあるのに加え、感情を文字で伝える難しさを物語った報告だと言えます。

20世紀のショッキングな心理実験にミルグラム実験というものがあります。教師役の被験者を集め、生徒役に問題を出題し、生徒役が間違える度に電気ショックを強めていくという実験です。もちろん電気ショックは偽物、生徒役もサクラで苦しむリアクションを取るというものです。興味深いのは、教師と生徒が同じ部屋にいるケースよりも、別々の部屋にいるケースのほうが、より高い電圧までかけることができたという結果です。

人は相手の様子が見えなくなると冷酷になりやすいことが証明されたわけですが、この結果をコミュニケーションに転じてみると、面会するよりもチャットのほうが、相手にショックを与えることが容易であると言えるのではないでしょうか。

これらのことを総じて言うと、文字によるコミュニケーションは、相手には期待する以上に感情が伝わりにくく、冷たい発言をしやすい状況にあるということです。対面では自然とさけられたトラブルであっても、チャットでは意図的に工夫することが必要になります。チャットで絵文字を使うのも、そのひとつになるわけです。

頼みごとに絵文字を加えるとポジティブな印象になる

ミズーリ大学の研究者らは、笑顔の絵文字を仕事上のメールで受け取った場合とそうでない場合で、どのような受け止めの違いがあるかテストしたそうです4。結果は、絵文字を含んだメールのほうが、受信者・送信者がお互いに好感を持つというものでした。信憑性には悪影響がないということも言っています。

この研究に基づけば、ビジネスにおいても遠慮せずに絵文字を活用していくほうが、受け取る側にとってもお互いにとっても良いことだということになります。

もう一つ、依頼と絵文字についての興味深い心理研究5があります。その研究は、同じ依頼内容でも絵文字の有無や絵文字の数で、送信者の印象がどう変わってくるか実験したものです。結果は予想と遠からず、依頼文にまったく絵文字を使わなかったよりも、絵文字を使ったほうが受け手はポジティブな印象を持つようになるそうです。興味深いのは、絵文字を使いすぎると絵文字を使わない場合よりも印象が悪くなるというところです。絵文字の使い過ぎは逆効果ということです。

この事実は、絵文字の使用量の按配が難しいというふうに受け取っても構わないと思います。が、それよりも相手にポジティブな印象を与えるには、ごく少数の絵文字で十分ということに注目したいです。絵文字は変換するのがさほど便利ではありませんから、絵文字が少しだけのほうがむしろ良いという事実は、なんとも都合の良いことではありませんか。最低限の手間でいいんです。

絵文字を使うと「喜び」は増し「悲しみ」は軽減される

最後に、絵文字の種類とその伝達具合について面白い研究6があったので紹介します。この研究では、喜び・悲しみ・怒り・不安の4つのメッセージを、絵文字なしのパターンと絵文字を加えた場合とで、感情情報の伝達を比較しました。

結果はというと、喜びのメッセージは絵文字を付加することで感情伝達が促進されたそうです。一方で、悲しみの感情は、絵文字があると悲しみの伝達が促進されるどころか、むしろ伝達が弱くなったそうです。これについて同研究は、悲しみに絵文字を使うと、外向性や有効性が上昇する一方で真実性や誠実性が低下するため、絵文字をつける余裕があるため、悲しみの深刻さが低減されるものと考えています。

笑顔の絵文字を添えることは、感情の伝達を考えるとものすごく効果的なのがわかると思います。ネガティブなメッセージを伝えなければならない場合でも、絵文字を使うことで、消極的な感情を伝えるのを和らげられるというわけです。

絵文字を手軽に入力するための工夫

ここまで絵文字がもたらす影響について見てきました。ここまで読んだ方の中には、絵文字を積極的に使っていきたいと感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

とはいうものの、絵文字を入力するというのは、言葉を書き込むより手間のかかる作業です。ですので、僕がどうやって入力作業を省力化しているかについても触れておきたいと思います。決して真似する必要はありません。参考程度に見てもらえればと思います。

STEP1 使う絵文字を5,6種類によりすぐる

ユニコードには1,851種類の絵文字があるそうです7。これを全て使おうと思ったらかなり大変なのは明らかです。使う絵文字は5,6種類に絞っておきます。僕の場合は、:blush::laughing:🙂:sweat_smile::persevere:の5種類にしています。

最初の3つは笑顔にバリエーションを持たせたいので選びました。残りの2つは、ネガティブな情報を伝えるとき、ネガティブな感情が伝わらないものとして選びました。

普段の発言ではこれら5種類をレギュラーメンバーとし、文脈にあわせて絵文字にひねりをつけたいときは、Slackの絵文字パレットから選ぶようにしています。

STEP2 Google日本語入力のローマ字テーブルに登録する

絵文字を変換するために、絵文字を辞書に登録のも良いとおもいます。たとえば、「えがお」と入れたら、:blush::laughing:🙂を変換できるようにしておくようにです。

僕の場合は、辞書ではなくローマ字テーブルに登録しています。ローマ字テーブルに登録しておくことの良いことは、スペースキー(変換)を押さなくても絵文字が入力できることです。

例えば、^^と2回キーを打ったら:blush:が、;^^と打ったら:sweat_smile:>_<:persevere:という具合にです。辞書に比べてはるかに手軽に絵文字を使えるようになります。

登録の手順は、ツールバーから「Google Japanese Input」の「Preferences」を選びます。

「General」タブの「Romaji table」の「Customize」ボタンを押します。

すると、ローマ字テーブルが出てくるので、「Edit」ボタンから「New entry」を選び、「Input」に英数字・記号を入れ、「Output」に絵文字をコピペなどして入れます。

Google日本語入力のローマ字テーブルは絵文字の表示に対応していないので、登録後空欄が表示されてしまいますが、キー入力を試してみて絵文字が出てくればOKです。

おわりに

仕事でチャットを使う機会が増えてきたのを背景に、絵文字についての考えを書いてみました。みなさんは、どんな感想を持ちましたか?

この記事を書いているときに「人は笑顔1回で現金16,000ポンド(215万円相当)の価値を感じる」という研究があることを知りました。これは、ほほえみ1回の刺激がチョコバー2,000個分の刺激に相当するので、チョコバーの単価を掛け算した金額なんだと思います。これ自体無茶な計算ですが、絵文字付きのメッセージで相手をニコリとさせられば、無償の原資で215万円の価値を与えられるわけです。

コミュニケーションには常に文脈が付き物で、正解がないのも確かです。それでも、些細な工夫で変わることもあります。ほんの少し絵文字を混ぜ込むだけです。派手なデコレーションはいりません。絵文字で215万円の値打ちは言い過ぎかもしれませんが、それでも感情は伝わりやすくなり相手をちょっぴり幸せにするのは確かなことでしょう。

次に送信するメッセージの最後に、笑顔の絵文字を試してみてはどうでしょうか?🙂

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